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【芸能の継承と地域づくり4】金武町金武区の観月祭

2020/3/24公開

沖縄の魅力のひとつとして、エイサーや大綱曳きに代表されるように、地域ごとに固有の芸能やお祭りが豊かであることがあげられます。後継者不足に悩む声が各方面から聞こえてくる昨今ですが、ただかっこいい、美しいというだけではなく、その営みが人と人とをつなげる役割を担い、地域を支えているからこそ、今もなお受け継がれているのではないでしょうか。本シリーズでは、芸能の継承を通して地域づくりを行なっている地域の方にお話を伺い、その取り組みをご紹介していきます。

今回は三線職人として松堂三味線店を営みながら、三線の演奏者として地域の芸能にも取り組んでいる松堂登さんにインタビュー。沖縄本島の北に位置し、豊かな自然にかこまれた金武町金武(きん)区の観月祭にスポットをあて、お話を伺いました。

幼少期から金武区の芸能に触れてきた松堂さん。三線を弾き始めた頃、「自分で弾くための三線を作りたい」という想いから三線を作るようになり、現在では祭で欠かせないミルクの面や胴体、獅子も一から作られたとのこと。職人として仕事をするかたわら、先人が残してきた芸能の保存継承に取り組んでいます。

—金武町金武区の観月祭について教えてください

私たちはこの「観月祭」のことを「八月十五夜遊び(はちぐゎちじゅうぐやあしび)」と呼んでいます。祭りは毎年、旧暦の8月15日に開催され、18時の時報に合わせてスタートするのが恒例です。

獅子舞とミルクが中心となり、出演者や住民と一緒に道を練り歩くことを「すねー」といいます。すねーは金武公会堂からスタートして、区内にある「ノロ殿内(ぬんどぅんち)」と呼ばれる場所で1年の無病息災や五穀豊穣を祈願し、また公会堂に戻ります。大きな貝で作った笛のような楽器「ボラ」や銅鑼(ドラ)のを鳴らすのですが、ここがすねーの一番の魅力!この音を聞くと気持ちがどんどん燃えていくというか…離れたところから聞いているだけで、とっても楽しい気持ちになるんですよ。

すねーの後は、公会堂前の広場に設置した仮設舞台で、獅子舞やミルク踊りはもちろん、棒術や琉球舞踊を演舞します。

松堂登さん

—観月祭では最近になって「ミルク踊り」が復活したと伺いましたが、どのようなきっかけで復活したのでしょうか

ミルクは他の地域にもありますが、金武区では「ミルク踊り」といって舞台上でミルクが踊るのが特徴です。「赤田首里殿内(あかたすんどぅんち)」という曲にのせてミルクがおどる姿は他ではなかなか見る機会はないかなと思います。

金武区のミルクのお面や胴体は戦後あたりに作られたものを長らく使っていて、劣化がひどかったんです。竹の骨組みにでんぷんで作られた糊で新聞紙をつけたものですから、虫に食べられたんでしょうね。そのため30年間くらいミルクはいなかったのですが、2000年頃に私が新しいものを作りました。私は幼少期から芸能に興味がありましたから、先輩たちが作っているのを見ていたのでなんとなく方法は分かったし、今は三線を作っているので技術もありました。

戦後のミルクと獅子(松堂さん提供)


前年の1999年には、村から出せない本物の神獅子に代わる、出張用のレプリカ獅子舞もつくりましたよ。これまで私たちの区には神獅子しかいなくて、神様に奉納する獅子ですから、1年に1回ある祭事の時にしか出せません。近年では、全島獅子舞フェスティバルやその他の祭りでの出演依頼もあるためレプリカが必要になったのです。出張用の獅子があることで多くのイベントに出演できて、より一層、稽古にも熱が入り、活気が出てきました。

第22回金武町まつりに獅子とミルクが出演したときの様子

—松堂さんは幼少期から芸能と関わりがあったとのことですが、金武区ではどのようにして芸能や行事に参加する人を集めていますか?また、地域で芸能を継承していくことの魅力について教えてください

かつては区長が毎年、観月祭が近づくと三線を弾ける人や舞踊を踊れる人を集めていました。でもそれだと区長の負担が大きい上に、呼べる人に限界があって…。結婚したら来ない人もいたりして…これでは先輩たちが残してきた芸能が発展しないということで、まず獅子舞保存会ができたんです。その後、形を変えて伝統芸能保存会になって、今まで続いてきました。観月祭の演奏演舞は、保存会のメンバーが中心になってやっています。

組織になることで、運営するにも稽古するにも中途半端にはできませんから、みんなが責任を持って取り組むんですよ。何よりみんなで集まっておしゃべりしたり三線を弾いたりするのが楽しかったですね。楽しいだけじゃなくて、人間性も成長するものですよね、芸能って。人から見られているから悪いこともできないし、責任を持って稽古しないとみんなに迷惑かけるから…楽しみながら人として作られていくというのが芸能の良いところですよ。

私も昔はオートバイに乗って、遊んでばっかりでしたよ。でも芸能があるから今は、仕事も三線も何をやるにも真面目に責任を持ってやろうって思うよ~(笑)

松堂さん制作の三線

—芸能の保存継承に課題を抱えている地域もある中で、金武区では地域の人が芸能に積極的に取り組めるようにするために工夫していることはありますか?

うちは特に変わった仕組みはないけど、「好きな人がやる」「楽しい事をやる」というのを大事にしていますよ。嫌いなものを無理にやらせたって、続かないでしょ?私たちの演奏演舞を見て、やりたいなーって思った人がやってみて、好きなら続ければいいし、違うなーと思ったらやめても構わないんですよ。

好きなのはなんだってよくて、三線でも踊りでも太鼓でも、なんでも。何かひとつでもやりたいことがあればいいんです。誰だって、好きなことは頑張れるし、責任を持ってやってくれますから。逆に出演者が多すぎると稽古するにも団結するにも大変だと思うから……特に工夫しなくても、金武区は自然と程よいバランスが取れていますよ。


特別なことはせず、好きなことを楽しむという気持ちを大切にする人々が営む金武区の観月祭。松堂さんも三線が大好きで、毎朝起きた時、仕事の休憩時に三線を弾くそうです。そうすると心が落ち着き「よし、頑張ろうと思う」と楽しげに語っていました。そんな松堂さんが今年も楽しみにしている、金武町金武区の観月祭は2020年も旧暦の8月15日18時にスタートします!

<取材協力>
松堂三味線店 松堂登さん
公式YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=X-BFg1GZ_lo


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