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【芸能の継承と地域づくり1】八重瀬町志多伯の豊年祭

2020/2/28公開

沖縄の魅力のひとつとして、エイサーや大綱曳きに代表されるように、地域ごとに固有の芸能やお祭りが豊かであることがあげられます。後継者不足に悩む声が各方面から聞こえてくる昨今ですが、ただかっこいい、美しいというだけではなく、その営みが人と人とをつなげる役割を担い、地域を支えているからこそ、今もなお受け継がれているのではないでしょうか。本シリーズでは、芸能の継承を通して地域づくりを行なっている地域の方にお話を伺い、その取り組みをご紹介していきます。

今回は、約300年の歴史があると伝えられている獅子加那志を祝う八重瀬町志多伯(したはく)の「豊年祭」にスポットをあてて、豊年祭実行委員で事務局を務める神谷武史さんにお話を伺いました。志多伯で生まれ育った神谷さんは、幼い頃から豊年祭に参加し、高校1年の頃、組踊を演じる村の先輩たちに憧れて芸能への関心を深めたとのこと。八重瀬町役場につとめて地域活動のサポート側に回りながらも、自身も組踊実演家として活躍されてきました。

—五穀豊穣を祈願する豊年祭は県内各地で行われますが、志多伯ならではの特徴はありますか?

志多伯の豊年祭は、開催する時期が法要周期と同様で、1年忌・3年忌・7年忌・13年忌・25年忌・33年忌の節目に当たる年にだけ行われ、『獅子加那志○年忌豊年祭』と呼んでいます。33年忌が終わると、翌年からまた1年忌が始まるのです。満月である十五夜の夜にやることに意味があるので、平日であったとしても、旧暦8月15日と翌日16日の2日間に必ず開かれます。

獅子は村の守り神といわれ、祭りの名前にも冠されているように、地域の人は「獅子加那志(しーしがなし)」と呼びます。加那志は「〜さま」という意味があり、私たちにとってはとても大切な存在です。豊年祭は、地域の繁栄や民の健康長寿や豊作祈願のためでもあるとともに、1番の目的はみんなで獅子加那志を崇め、その行事を絶やさず継承していくというテーマを、共有して取り組んでいるところが、ここの豊年祭の特徴でしょう。

獅子加那志と神谷武史さん

—2日間、お昼から夜遅くまで祭が行われるのですよね。どのくらい人が、どのような芸能を披露されるのでしょうか?

毎回、出演者だけで100〜150名ほどいます。それ以外にも村の祭祀を司る神人(カミンチュ)や運営スタッフもいて、さらに家族や里帰りをした親族が観客として参加しますので、人口わずか1,000人の地域としては、かなり多くの人が豊年祭に関わっています。

豊年祭当日は、獅子加那志が奉られている村の山手にある獅子屋で、神人による拝みのあと、出演者が芸装で獅子を迎え、隊列を組み拝所を廻る「道ズネー」からスタート。その後、豊年祭会場である馬場のバンク(仮設舞台)で棒術や舞踊、組踊、芝居、狂言などが演じられます。大体1日で30演目なので、18時くらいから始まって24時半くらいまで、ノンストップで6時間半もの上演ですね。

獅子と道ズネーの様子

組踊の一場面

プログラムの中でメインとなるのは、やはり獅子加那志です。前獅子、中獅子、後獅子と3回も出てきます。舞い手は6人と限定されていて誇りあることですから、青年たちも張り切ってやってくれますよ。

獅子加那志

また、前々回くらいの豊年祭から、組踊『手水の縁』に登場する「門番」という役を区長がやるのが定番になっており、玉津の家に忍ぶ山戸と門番のやり取りでは区長の名演技…それはもう見ものですよ!(笑)

—地域の芸能では、後継者不足が課題のところも多いと聞きますが、子どもや若い人に協力してもらうには何が必要だと思いますか?

子ども同士や先輩から後輩への呼びかけも大切だけど、一番は家族がやっている姿を見せることや、自分の祖先の活躍ぶりを聴かせることだと思いますね。おじいやおばあ、お父さんお母さん、お兄ちゃんお姉ちゃんがやっていた役に、子や孫たちが「かっこいい、やりたい!」と思わせるのが大切だと思います。

豊年祭に向けては、約1年前から準備が始まり、出演者は指導者から年長者や共演者への挨拶や礼儀作法も学びながら、習得に励みます。クーラーのない公民館で、汗だくになって区民の皆さんと練習する過程には、学校では味わえない楽しみがありますね。

また、若者や大人を巻き込むためには、しっかりとした組織づくりが重要です。出演者以外の人を専門部会5部門と運営部会4部門の部長、副部長やその委員に任命するなど、一人ひとりに明確に仕事を依頼。そうすることで、使命感や責任感を持って関わってくれることにより“みんなが主役の豊年祭”になります。

かつては、全ての責任を区長、副区長が担い運営していました。負担も大きく、「豊年祭の年に区長になったら家が潰れる」という声もあったほど…だからこそ、区長になる人が安心してできる組織の体制づくりを心がけました。


豊年祭のない年も、公民館では古典音楽愛好会や獅子舞棒術保存会が芸を受け継ぐべく、練習を欠かさないとのこと。「興味を持って取り組んでくれる若者が多く、地域の祭りはこれからもっと盛り上がりますよ」と力強く語る神谷さん。次の豊年祭は4年後の2024年。十五夜の満月の下で演舞できる日を楽しみに、汗を流しています。

棒術を披露する神谷さん

<取材協力>
沖縄県立芸術大学 講師 神谷武史さん
志多伯 ウェブサイト:https://shitahaku.ti-da.net/


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