一見さん歓迎!『琉球歌劇まつり』で沖縄版オペラを鑑賞
2020/2/7公開
みなさんは、「琉球歌劇」をみたことがありますか?歌、所作、舞踊、せりふ、音楽で組み立てられた県無形文化財に指定されている歌舞劇で、沖縄が誇る宝物のひとつです。令和元年度には、県無形文化財に指定されてから30年という節目の年を迎えています。今回は、長きにわたって保存・継承に取り組んでいる琉球歌劇保存会の事務局・吉田真和さんに、その魅力を伺いました!
—歌、所作、舞踊、せりふ、音楽……構成されている要素をみると、「組踊」と似ているようですが、「琉球歌劇」ならではの特徴を教えてください
琉球歌劇の特徴は、役者がセリフである琉歌を心境や心情などに沿って、三線に合わせて歌うことです。役者のうたと三線の奏でる旋律の味わい、表現豊かに演じられる役者の動き、場面の移ろいを可視化する舞台装置など、組踊の抑制された表現とは違う魅力があります。
また、組踊との最大の違いは背景幕が変わる事です。紅型幕一つで上演される組踊とは異なり、琉球歌劇は場面や演出によって背景幕や大道具などが変わることで、舞台をより盛り上げます。


令和元年6月30日30周年記念公演 名作歌劇「奥山の牡丹」より(提供:沖縄県教育委員会)
—ほとんどがしまくとぅばで上演される琉球歌劇ですが、言葉が分からない人でも鑑賞することができますか?
しまくとぅばが分からない方でも、2つの鑑賞のポイントをおさえれば楽しく鑑賞していただけます。あらかじめ物語のあらすじを把握して、見所などを抑えておくこと。そして、うたと三線の旋律、曲想を感じることです。場面の移ろい、展開や感情表現、役者の心情を「音」として聴くことで、より物語の世界観に触れることができますよ!

現代「貞女と孝子」(提供:沖縄県教育委員会)
—事前にあらすじを把握しておくことが大切なのですね。では、「琉球歌劇まつり」で上演する名作歌劇「泊阿嘉」と喜歌劇「馬山川」について、あらすじと見どころを教えてください!
名作歌劇「泊阿嘉(とぅまいあーかー)」
ときは明治の頃のお話。3月3日浜下りの日、海辺で出会った思鶴(うみちる)にひとめぼれした樽金(たるがに)。その姿が忘れられなくて毎晩、思鶴の家近くの泊高橋に通い続ける……。だがそんなある日、父の代わりに伊平屋島に行くことになった樽金。一日たりとも忘れたことはない恋しい思鶴への想いは、日に日に増すばかり。 それから3か月、ときは移ろい、泊港に戻ってきた樽金。目にしたのは喪服姿の思鶴の母。思鶴からの手紙を受け取り、信じがたい現実に樽金は茫然自失。儚くも切ない二人の運命はいかに……。
若手役者の上原崇弘が主人公樽金の心境をどのように表現するのか、お楽しみに!

名作歌劇「泊阿嘉」
喜歌劇「馬山川(ばざんがー)」
ときは戦前。八重山は白保の民謡「真謝川」の一節を、沖縄芝居でおもしろおかしく描いた作品。やなかーぎー(ブサイク)男が、真謝川で水を汲むちゅらかーぎー(美女)に惚れるが、ちゅらかーぎーにはハンサムな彼氏がいた。ある日、井戸で待ち合わせる約束をしたこの美男美女カップル。ハンサムな彼氏が約束に遅れケンカになるも、やがて仲直り。松の下へとデートに出かける。一方、やなかーぎー男は自分の奥さんのことを「やなかーぎー」とからかって取っ組み合いの夫婦ゲンカになり、サァ大変な騒ぎに!そこへ騒ぎを聞きつけた美男美女カップルがやってきて、やなかーぎー夫婦を仲直りさせることに。どうなることやら……。
「泊阿嘉」とはうってかわって、役者陣の滑稽な演技が魅力です。こだわりの配役や演出にもご注目ください!
「事前にあらすじを把握しておくことで、上演中は歌と演技に集中していただけますよ」と吉田さん。演者さんのささやかな、それでいて巧みな所作や表情も見落とさずに鑑賞できますね。まだ見たことがないという方も、この機会に「琉球歌劇」デビューしてみてはいかがでしょうか。
<取材協力>
琉球歌劇保存会 事務局 吉田真和さん