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上映会から生まれるコミュニケーション-在宅支援センターかいほうと沖縄アーカイブ研究所-

2020/3/9公開

沖縄アーカイブ研究所(シネマ沖縄内)は沖縄県と公益財団法人沖縄県文化振興会が実施する「沖縄文化芸術を支える環境形成推進事業」の支援を受けて、沖縄の人々などが撮影した8mmフィルムの収集、保存、利活用を行っています。収集したフィルムはデジタル化され、インターネット動画サイトで無料配信されます。個人が撮影した家族の映像や子供たちの成長記録などから、人々の生活とその背景にある文化の変遷を見ることができます。

この活動は収集・保存だけではなく、公開したあとの映像の利活用にも力を入れており、県内の図書館をまわっての上映会ツアーや沖縄テレビの番組放送(「沖縄アーカイブ」)、アーティストとのコラボレーションを行うなど、活用の幅を広げています。新たな活用の場として、今年度は医療施設・高齢者福祉施設での上映会に力を入れており、今回デイケア施設での上映会が行われました。

地域に残る映像の記録をアーカイブする文化的な取り組みと、地域に密着するデイケア施設でそのアーカイブ映像を活用する試みについて、沖縄アーカイブ研究所と在宅支援センターかいほう双方にお話を伺いました。

沖縄アーカイブ研究所(シネマ沖縄)の取り組み

株式会社シネマ沖縄 真喜屋 力さん・仲間 公彦さん

-8mmの映像はどうやって収集されていますか

最初は新聞で呼びかけ、その後はイベントを開催するなどして呼びかけることで映像が集まってきました。 ただ収集・公開するだけではなかなか映像は集まりません。積極的に上映会を行うことで、個人の生活を記録した家庭用の8mmフィルム映像でも、こういう使い方があるんだなということがわかり、集まるようになります。
たいていの方は家の記録を撮っているので「他の人が見ても面白くないよ」とおっしゃいますが、見てみると他人の家庭の記録映像が面白かったりするんです。「だったらウチにもあるよ」と、安心して提供してくださいます。
沖縄アーカイブ研究所の活動は2019年度で3年目となり、現在集まっているフィルムは1425本。デジタル化しウェブで公開している本数は214本になりました。(2020年2月26日現在)

-実際にアーカイブを拝見しましたが、ホームムービーに記録された映像は当時の生活が垣間見えて非常に興味深かったです。たとえば「プラザハウスへ」という1978年の映像。かつてのプラザハウス・ショッピングセンターの様子や映っている人の服装なども新鮮でした

映像を見るポイントを変えれば様々な楽しみ方があります。それも上映会をすることで、こういうところが見たいんだとか、こういうところを気にして見るんだなとか、お客さんに教えてもらえます。
アーカイブはインターネットで公開しています。ブログで動画についての説明を添えて紹介もしていますが、映っているものを説明するとなると、歴史も押さえなきゃいけないですよね。もし映っているのが撮った本人にも何か分からなければ上映会で見に来た方に教えてもらったり、SNSなどでみなさんの意見を聞いたりもします。

映像はあくまで“種”というか、映像があって、それを見せることでみなさんが自分の視点から様々な見方で見たり、背景が分からなければ歴史も調べたり、掘り下げ始めるんです。 上映会では説明もしますが、お客さんの声も聞きながらやっています。全然違う話が始まったりするんですけど、それがきっかけになって、また会場が盛り上がる。用意されたものとは違うネタも広がって、それをみんなで共有することができるのが上映会の楽しみ方のひとつですね。

在宅支援センターかいほうでの上映会

集まったデイケア利用者へ向けて沖縄映像アーカイブ研究所の真喜屋さんが映像の説明を交えながら上映会を行いました。

参加者はレクリエーションの一環として上映される映像の説明を聞きながら、昔はこうだった、あの頃はこんな仕事をしていた、など口々に感想を話し、会話を楽しむ様子が見られました。上映時間中ずっと参加している人もいれば、立ち寄って少しのあいだ気軽に見る人など、思い思いに過去の8mmフィルム映像を鑑賞していました。

上映会を終えて

在宅支援センターかいほう 外間政一郎医長・町田裕乃理学療法士

-今回のような上映会を行うのは初めてですか

町田さん

ここでは年末の“望年会(忘年会)”というレクリエーションの場がありますが、これまでは外部の方に余興をお願いして歌や踊りを鑑賞していました。今回、上映会を利用して利用者のみなさんと過去の記録映像を通して色んな話をしてみるっていうのは私たちも初めての経験でした。昔の8mm映像を保存して誰でも見られるようにしている取り組みがあると、外間医長から教えてもらったのがきっかけです。

外間医長

自分でも写真を撮るのですが、去年、那覇市の過去の写真や8mmフィルムを集めようという会に参加して、そこでアーカイブ研究所の取り組みを知りました。8mmもおもしろいなって思ったのが上映会をやろうとしたきっかけです。
以前、わたしの親が撮った那覇から名護までの古い写真を望年会で映写したら、あまり昔の写真が無いので利用者の方たちが喜んでくれて、”ぬちぐすい“だと言ってくれた方がいたんですよ。自分が若かったころの写真を見て、その頃の気持ちが蘇って活力が沸いてきたみたいな。そういうことを一言、言ってくれた人がいたので、過去の映像とか写真とかを見て生きる力のようなものが湧いてくることがあるのかなって。古い写真はこれまでも見てもらったりしていたんですが、映像ならもっと喜んでくれるかなと思いました。

上映会の様子

外間医長

年代的に軽度から重度まで認知症の症状の方もいらっしゃるんですが、みんなが共通して経験してみてきたものだったので、反応がいろいろ出てきたのがおもしろかったです。今回は説明をしていただきながらの上映でしたが、一緒に見ているスタッフが孫の世代なので、どこの映像なのか、何をしているのかの説明なしで、利用者さんとスタッフで「これなんだろう?」って、映像を見ながら当時を知るみなさんと一緒に考えたり教えてもらったりしながらコミュニケーションするのも違った反応が出て面白いかもしれません。

-ある映像でウィスキーが画面に映った時に、スタッフの方が「ウィスキーと言えば〇〇さんだね」と、利用者の方に話が広がったのが印象的でした。

町田さん

あの方は映像を見るのが2回目なんです。最初に見た時にウィスキーの話で盛り上がりました。
こういう話は普段のデイケアの生活ではなかなか聞き出せないので、すごく良い機会でした。

外間医長

上映会を開催する時には利用者の方達が映像を楽しんでくれるようにと思っていましたが、スタッフも映像を通して利用者の方のこれまでの体験を共有できたっていうのは予想外の収穫でした。
違う目線が入るとまた違う反応をしてくれたというのも、スタッフがこの人にはもっと引き出しがあるのかも、という発見があったと思います。スタッフ側にも発見があったことは最初に想定していない効果でした。


「映像の利活用をする方法は様々あると感じています。インターネットに公開している映像の活用に許可は必要ありません。自由に誰にでも使っていただけます。たとえばデイケアのスタッフの方だけで上映会を開いていただくことも可能です。インターネットの環境がないなど、相談いただければ映像をDVDにして渡すこともできます。様々な形で使っていただきたいですね。」と、真喜屋さん。

過去のアーカイブ映像を鑑賞して楽しむだけでなく、新たなコミュニケーションが生まれる場としての可能性も感じる上映会でした。

取材日:2019年12月7日

左から沖縄アーカイブ研究所・真喜屋さん、仲間さん。在宅支援センターかいほう・外間医長、町田さん

<取材協力>
沖縄アーカイブ研究所
公式ウェブサイト:https://okinawa-archives-labo.com/

医療法人 球陽会 在宅支援センター かいほう
公式ウェブサイト:https://www.kaiho.or.jp/riha/tuushokango.html


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