Interview

『女性の地位向上と沖縄の文化振興に向けて』金城幸子氏インタビュー 後編

2019/2/13公開

ホテルサンパレス球陽館 取締役専務 金城幸子氏インタビュー 後編

金城幸子(きんじょう・さちこ)
1940年、横浜市生まれ。1964年「観光ホテル球陽館」に入社。現在も「ホテルサンパレス球陽館」取締役専務を務める。
ホテル業の中で文化を発信するユニークな活動を続け、沖縄をテーマにした「響き合う食卓展」では15年間にわたり若手に発表の場を提供した。2018年はサンパレス球陽館70周年に合わせて「70年の時を紡ぐ 染織と漆器と陶器」を開催した。

決定権のある場所にもっと女性がいた方がいい

-ターシャ・テューダー展と瀬戸内寂聴展のお話がありましたが、金城さんは「国際ソロプチミスト沖縄」にも関わり、女性の社会的地位向上に関する活動も続けてこられたかと思います。沖縄で最初に自動車免許を取った三人の女性のお一人だとも伺っています。

そうなんです。それで大きい車に乗っていて。私、ダッジのプリムスを運転してました。この前キューバに行ったら、「あら、私が乗ってた車がまだ動いてるわ」と思ってね。

ソロプチミストのミッションは女性と女児をサポートしようということなんですね。今、女性の地位が上がってますよね。でもまだまだ低いと思います。決定権のある場所にもっと女性がいた方がいい。だから決定する女性たちがもっとセンスアップしてほしい。センスが悪いんですね。それはね、あちこち見てらっしゃるけれども、ただ見るだけで終わりになっているんです。なぜそれをご自分の仕事に活かさないのかと思いますね。だって海外旅行はもう普通ですよね。あちこち見て来たはずなのに、何を見ているのかなって。

サンパレス球陽館のアールヌーボーの内装は、マイアミで開催されたホテルの見本市に行った時に見てきたものを活かしています。いいものはやっぱり真似しないと。球陽館は宿泊客へのお水のサービスも早くから始めましたし、かりゆしウェアのレンタルなど、お客様のニーズに応えるべく努力していますが、そのために見てきたものをどう活かすかということですね。いつも思うのは、決定権のあるポジションにもっとセンスのいい人がいたら、こんなものは作らなかったんじゃないかということが、世の中を見ていて多いですね。

階段の形なども海外で見たものを参考にした(サンパレス球陽館)

那覇でイルミネーションを作ったのもうちが最初なんですよ。ニューヨークのイルミネーションを真似て、子どもたちがお母さんに「クリスマス通りを通ろう」ってねだるくらいに。でも歩道は市のものだから取ってくださいって全部取らされたんです。一生懸命植えた花と緑もあっという間に伐られました。行政はもう少し育てることを大切にしないといけないと思うんです。人も育てないといけないけど、動植物も簡単に切ったら育ちませんよね。やる気を起こした市民ががっかりさせられるような都市でいいのかなと思いますね。

ハワイから帰って提案したのが、「久茂地のガーブ川を蓋してパーキングにして下さい」ということ。大きい排水なんだからパーキングにしてお金を取りましょうって。見てきたものをみんなもっと活かしてほしいし、行政はそこにお金を出してほしい。女性はどちらかというと、あんまり先を見ないですね。いいなと思ったらもう走ってるんですよ。男性はまず計算する。でも計算の帳尻は後からついてくると思ってるんですよ、私はね。

-失敗しない秘訣はありますか?

一生懸命やることじゃないですか? そして周りにネットワークをたくさん持つこと。いろいろなご縁を大事にしてね。ホテルは人と人との出会いの場所ですから、出会った人に喜んで帰っていただいて、また次のリピーターになっていただくことを大切にしています。

まだ目に見えていないもののために

-沖縄県や沖縄県文化振興会に期待することを率直にお話いただけますか?

今は目に見えるものばかりが注目されますけど、まだ目に見えていないもののためにもっと努力していただきたいし、わかりやすいものばかりではなくて、今の世の中で十分に注目されていないもののためのステージをつくっていただきたいと思いますね。いろいろな地域の方が頑張っていますけど、見落としているものもまだいっぱいあるんじゃないかな。

古民家を再生した宿で有名になった松場登美さんという方がいますが、やんばるにも古民家がたくさん残っていますね。崩れてしまう前に古民家カフェとか、古民家ギャラリーのようなことができないのかなと思います。パリでも道後温泉でも、古いものを大事にすることがお金にもつながっていますね。それから、奄美大島には藍染を体験できるエコビレッジのような場所がありますが、沖縄にもいろいろな工芸を集約した施設があるといいですね。

-話を伺っていて印象的なのは、金城さんを育んだ戦後の空気です。お父様もスペイン語を話され、アメリカの方とも自由に交流して、そのあと金城さんはいろいろな芸術家とつながってこられました。自由でグローバルと言われている今の方が、むしろ人が混じり合っていないのではないでしょうか。日本人とかアメリカ人とか中国人とか、経済人と芸術家とか、むしろ壁や隔たりは大きくなっているように思います。

戦後の沖縄は誰でもお互いに話しかけやすくて、壁がなかったと思います。偏見がなくて、話をすれば分かり合えるという雰囲気があって。それは父が言葉を大切にしていたからでもあったと思います。私の父はたぶん口減らしで20代後半になってから10年近くペルーへ行ったのですが、戻ってくる時に横浜で私が生まれました。父はよく「自分の成功は言葉だ」と言っていました。ペルーに行って、スペイン語を学んで帰ってきたことがぼくの成功だと。

現代人はシャイなのかもしれないし、下手に喋ったら笑われるんじゃないかと思っているのかもしれませんね。私はそういうことはなくて、誰にでも話しかけて、誰とでもお友達になれます。農連市場のおばさんたちとも友達です。毎日いろいろな方と出会ってつながっていくことがとても大事だと思います。だから壁をつくらない、誰にお会いしても分かろうとすることですね。今は情報やノウハウがすぐに手に入る時代ですよね。ネットで調べればすぐわかるけど、やっぱりまずは隔たりなく話してみないと分からないんじゃないでしょうか。

いろいろな文化を一つ一つ、少しでもいいから残していく

-現代では逆に文化や芸術の内部でさえ、理念の違いや流派の違いや方向性の違いがすぐに壁になってしまいます。文化や芸術は、対立があるところにも対話やつながりを生み出すはずなのに、むしろ文化や芸術自体が対立の一つになりかねない状況です。

文化事業のスポンサーになってくださる企業同士でも同じことがありますね。芸能の流派の違いなどもそう。ただ、そういうことはもう、あまり良くないことだと思いますね。もっとオープンにして、いいものはいいと認め合うようにしていただきたいと思います。

今の時代にはいろいろな制約があって、人の心を狭くしているところがあるんじゃないですか。「なにかあったら大変だからダメ」とかね。でも、そういうことではないと思いますね。良いものは良いとお互いに認め合って、切磋琢磨していいものを作る努力が必要ですね。

-文化で対立するよりも、綺麗なものを見ることが大切ですね。

そう。どうしても嫌いな人には近づかない。嫌なことをすると自分が惨めになるじゃないですか。分かり合うことは大切だけど、不必要な喧嘩もしない。私はできるだけ美しいものを見なさいって教わったのね。綺麗なものを見る努力をしないといけないですね。そのおかげで私は健康で風邪もひきませんし、お産以外では病院に入ったこともないんです。今78歳よ。風邪を引いてもくしゃみと鼻水で終わり。薬を飲んだらすぐに治る。毎日神様に転ばないように、怪我しないように、交通事故に遭わないようにって祈っています。

旧暦の毎月一日は、前島の塩の神様にご挨拶しています。そういうこともとても大事に思ってます。沖縄の祭事(まつりごと)も私は一生懸命やります。ホテルはいろんな人が出入りするところですから、大難を小難に変えていただけますようにと、いつも一日と十五日はヒヌカンにご挨拶しています。前島には塩の神様があって、もともと潟原(かたばる)と言って埋立なんですね。父はその潟原に土地を買って、戦後に今の場所を求めたんです。

私は子供が4人いますけど、大学は全部推薦で入れました。だから受験戦争はなしです。あなたに合った学校に入ればいいと、無理しないでねと。ただ、旅館は家業を継ぐ人がいなかったらストップなんですよね。長男と次女は、自分たちはそのために勉強していたんだから、家業を継ぐしかないって言ったので、継いでもらっています。みなさんそうだと思いますが、次の世代をつくらないと、つないでいけないと思います。工芸のコレクションもそうですね。次の世代が一生懸命やればつながっていくというのは感じますね。

今はなんていうのかな、自分のしてきたことをどう残して、何を捨てるかっていうことね。このホテルも変わっていくだろうし、何をつないでいくかということがこれからやらなきゃいけないことだと思ってます。息子たちは息子たちの時代に沿った経営の方法があると思いますけど、やっぱりうちにしかないものは残していかないといけない。どこのホテルにもこういう古いものはないと思います。それはうちの自慢です。文化を残すということですね。食も文化ですし、工芸も文化で、多面的にいろいろな文化があると思うんですけど、それを一つ一つ、少しでもいいから残していけるように、つないでいきたいなと思いますね。

2018年12月7日収録
聞き手:沖縄県文化振興会 林立騎、宮島雅行、高良真由美


<取材協力>
ホテルサンパレス球陽館
公式ウェブサイト https://www.palace-okinawa.com


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