Interview

【シリーズ・メセナ】エアポートトレーディング株式会社 代表取締役社長:丸橋 弘和氏

2019/1/22公開



「社会に貢献するには、まず感謝の気持ちを表すことから」 

エアポートトレーディング株式会社
代表取締役社長 丸橋 弘和さん

「当社の経営理念は、社員を幸せにできるかどうかです」。那覇空港にみやげ物店「空人(そらんちゅ)」を構えるエアポートトレーディング株式会社の丸橋弘和社長は力を込めて言う。社員が携帯するカード式の「CREDO(クレド:企業の経営理念を含む信念で、会社と社員の約束や契約)」に示されたその経営理念の冒頭には、社会貢献の重要性が謳われていました。

Q貴社の経営理念には社会貢献が一番最初に書かれていますね。

CREDOの中には経営理念や行動指針が示されている

会社を立ち上げる前は、航空会社に勤務していました。じつは、ここでの経験や学びが弊社の経営理念に生かされているんです。海外勤務時代に、航空路線の廃線支店撤収で30人ほどいた部下の解雇に苦心したことがありました。そうした経験から、なによりもまず、人を大切にすることがすべてだと気づかされました。当時部下だった現地の方々とはいまでも交流があって、再訪問したときには集まって彼らが食事会を開いてくれました。当時の会社全体の経営状況を考えると路線撤収はやむを得ない判断であったとしても、職を失うことは個人の人生において大きなことです。現地日本商工クラブでお付き合いのあったメーカーや事業所に再就職をお願いするなど、最後まで一生懸命やってよかったなと本心から思った瞬間でした。

会社が継続しても社員が幸せになれなかったら、本末転倒なんです。もちろん、その前提として適正な利益を得ていくことは必要ですが、利益追求だけではだめ。重要なのは、社会に必要とされるかどうかです。だから、私どもの経営理念の最初に「社会貢献」を置き、そのうえで社員の幸福について言及しています。

経営理念や指針をカード式にしているのは、社員が携帯できるようにするためです。社員教育という観点もありますが、同時に社長である私もこの理念に従うことになります。理念にはこう書いてあるけれど、ちゃんとその通り運営できなければ意味がありませんから。それに、私は県外出身者で、航空会社に勤めていた言わば部外者です。よそ者である私がなにを考えているか、どういうことを目指しているかを明示したうえで、社員と目標を共有したいと考え、社員と意見を交わしながら作りました。

Q社員を大切にするという信条に共感します。社員とのコミュニケーションを密に取られているということを実感するエピソードですね。ほかにも理念を形にするような取り組みをされているのですか?

はい、「サンキューカード」に取り組んでいます。社会貢献で重視しているのは、人に感謝を示すこと。先ほども申し上げた通り、社会に必要とされるとは、つまり人を大切にすること、それに尽きると思います。私どもは小売業ですから、感謝をされることも大事ですが、感謝の気持ちを示してみようとサンキューカードというのをはじめてみました。お世話になった人や感謝したい人に、サンキューカードにちょっとしたメッセージを書いてお渡しする、ただそれだけなんですけどね。社外の人、たとえば出入りされている取引先の方とか、警備の方とかにも。それだけじゃなく、販売支援で来ている方、業務委託先の社員の方、社内同士でもいい。とにかく、感謝できる人になろうとカードを書いてもらっています。何枚カードをお渡ししたか、その枚数もカウントしています。もちろん、ただ何枚もらったか渡したかだけではなく、どれだけ感謝の気持ちを表せるかです。感謝を示すことがいい関係づくりにつながるんじゃないかな。こうした取り組みも地道に続けています。

感謝の気持ちを伝える「サンキューカード」


商工会議所で実施されている検定試験に「販売士検定」(リテールマーケティング)というものがあり、社員の販売や問題解決能力向上と学習によるより高い気づきを得てもらうため、こういう資格にもチャレンジしてもらっています。実際インバウンドは好調ですが、その反面、生活が豊かになっている感じがしないという声も報道されていますよね。自分たちの労働環境や給料といった条件が改善されているという実感がないからではないでしょうか。但し単に条件だけが良くなっても直ぐそれが当たり前になり、より高い給与が欲しいという本質から外れてしまうスパイラルに陥ってしまいかねません。もちろん結果も大事ですが、自分たちの幸せにどうつながるかを社員も一緒になって考えてもらいたいと思っています。中小企業では特に社長のリーダーシップが重要ですが、やはりそれだけでもいけません。売り上げを上げるとはどういうことなのかということだけでなく、社員が健康で働けることの大切さといった本質的なことも自ら学んで取り組んでいただける社風づくりを心がけています。

Q企業理念には沖縄への想いも強く表れていますね。沖縄文化に関わる社会貢献や自社の取り組みではどのようなことをされていますか?

泡盛マイスター協会 新垣会長と

我々は沖縄の会社ですから、「とりわけ沖縄に貢献」したいと理念に記しました。

最初にはじめた社会貢献はスポーツでした。選手の活躍が沖縄に元気を与えてくれるからです。琉球ゴールデンキングス、FC琉球、琉球コラソンなどに支援しています。

文化でいうと、「泡盛」を含む琉球料理の文化を支援していますね。今後泡盛の輸出量は徐々に増えるかもしれませんが、出荷量はピーク時に比べてずいぶん落ちています。私どもでも自社製品の泡盛を展開していますが、泡盛の普及や業界全体の振興をはかるために、泡盛マイスター協会や日本バーテンダー協会沖縄支部のほか、黒麹菌食文化圏における琉球料理および琉球泡盛の世界無形文化遺産(ユネスコ)の登録を目指す要請活動などを支援しています。

Q芸術文化分野では、「こども国際映画祭in沖縄」(KIFFO)に第1回目からご支援されていると伺っています。映画祭の活動を長く続けられるのは、貴社のような息の長いご支援が大きいと思います。

ククルビジョン代表の宮平貴子さんとは、沖縄タイムス社主催の「タイムス・メセナセミナー」(委託:沖縄県文化振興会)がきっかけでお会いしたと記憶しています。その後、映画祭についてお話しを伺うなかで、ご支援を決めました。最初は、子どもスタッフのTシャツを提供しました。

こどもが中心の映画祭「こども国際映画祭in沖縄」(KIFFO)| 提供したTシャツを着て


毎年ご支援していると、その苦労もさることながら、年々活動が発展してきているのがわかります。こうした芸術活動って、半ばボランティアみたいな心意気でやっているようなところがありますよね。反面、運営面が弱かったり、事務的なことが手薄になっていたり。私どもが支援させていただくのは、やはりこうした良い活動が続いて欲しいからというのが前提にあります。だからこそ、事務局の必要性について指摘することもありました。

Q支援する/されるの関係を超えた、パートナーシップが構築されていることを実感するエピソードですね。最後に、企業として社会貢献活動をするうえで、いまどのようなことが求められているかお聞かせください。

社会的に支援すべき活動は多くあります。沖縄文化でいえば、紅型などの服装文化も守っていくべきもののひとつでしょう。実際には、企業にとって寄付ということで支援を続けることはかなり厳しいものがあります。寄付が馴染むものもあれば、そうでないものもあります。寄付という方法以外にも、例えば会社の広告宣伝という側面からの支援など、より民間企業がやりやすい支援の仕組みが求められていると感じています。

<取材協力>
エアポートトレーディング株式会社
公式サイト https://airport-trading.com/

いま、地域・社会貢献活動に取り組む企業に、注目が集まっています。文化芸術の「人と人とをつなぐチカラ」が、地域活力の源として期待されているからです。今年度は、民間企業と芸術団体がパートナーシップを組み二人三脚で取り組む、文化芸術を活かした地域づくり、人づくりの事例を紹介!企業活動と文化芸術の連携の可能性について話し合います。

 日時: 2019年3月1日(金) 13:30~17:00
 会場:沖縄県教職員共済会館・八汐荘(那覇市松尾1-6-1)
 参加費:無料(要予約、定員になり次第締切)


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