組踊
琉球古典芸能の粋といわれる組踊は、唱え(セリフ)と音楽、演技、踊りからなる音楽劇です。中国と冊封・進貢関係を結んでいた琉球では、王が代わる度に中国から新国王任命の使者(冊封使)を迎え、その接待は外交上の重要任務でした。1719年、王命を受けたエリート官僚・玉城朝薫によって、琉球の故事をテーマに中国や大和の先行芸能の影響も受けた五つの組踊(執心鐘入・二童敵討・銘苅子・女物狂・孝行の巻)がつくられました。首里城の特設舞台で初演された組踊は、「踊りがモノ言う」とセリフのない踊りしか見たことがなかった人々を驚嘆させ、以後、次々と新たな作品も創作されました。組踊の特色は台本を備えていること、登場人物のセリフの唱え方や演技等に様式があることです。今に残る台本は約70本を数えます。
1879年、琉球王国は解体され日本の沖縄県となりました。組踊を担っていた王府の役人たちは商業演劇の場で組踊を披露するようになり、地方にも伝えられました。戦中戦後の激動の歴史のなかでも、組踊は沖縄の人々の心の故郷として大切に継承されました。組踊は能・狂言・歌舞伎・文楽と同じく、我が国の重要無形文化財、ユネスコの世界遺産に認定されています。2019年に初演から300年を迎える組踊は、国立劇場おきなわを拠点に王国時代の名作のほかに、芥川賞作家・大城立裕や若手実演家等によってつくられた新作組踊も上演され好評を博しています。